足立 拓朗(あだち たくろう)
1990年からシリアでのフィールドワークを通じて西アジア考古学に携わり、イラン、エジプトでの遺跡調査にも参加してきました。現在はヨルダンとサウジアラビアを中心に活動し、ジャフル盆地のハラート・ジュハイラ遺跡およびタブーク州のワディ・グバイ遺跡を調査しています。最近の研究テーマは西アジアにおいて先史時代遊牧民の交易が果たした役割を明らかにすること、そして銅石器時代における乳製品利用の解明です。
前者の研究では、特に貝製品の研究に主眼をおいています。この研究で、先史遊牧民社会の交易活動と都市の成立の関係を読み解くことを目指します。後者の研究の目的は、銅石器時代の土器に付着した炭化物の分析により乳製品利用の具体的な証拠を得ることです。この研究から遊牧民社会の成立における乳製品利用の重要性を検証します。この二つの研究を通して、メソポタミア文明の成立に先史遊牧民社会が果たした役割を明らかにしていきたいと思っています。また、このプロジェクトの後半からは、先史時代遊牧民の羊毛織物生産の研究にも着手したいと考えています。
主な著書・論文
・Adachi, T. (2019) A Chronological Division of the Iron Age III Period at the Tappei Jalaliye in Giran, Northern Iran, S. Nakamura, T. Adachi and M. Abe (eds.) Decades in Deserts: Essays on Near Eastern Archaeology in honour of Sumio Fujii, Tokyo, Rokuichi Shobou, pp. 319-322.
・Adachi, T and S. Fujii (2018) Shell Ornaments from the Bishri Cairn Fields: New Insights into the Middle Bronze Age Trade Network in Central Syria, Proceedings of the 10th International Congress on the Archaeology of the Ancient Near East, Harrassowitz Verlag, pp.239-246.
・Adachi, T and S. Fujii (2018) Wadi Hedaja 1 and 2: A Chronological Assessment Based on Unearthed Artifacts, al-Rafidan 39, pp.55-69.
Adachi, T. (2016) Shell Ornament Processing Methods in Northern Syria during the Early and Middle Bronze Ages, Bulletin of the Ancient Orient Museum 35, pp. 31-44.
・Adachi, T. (2010), Considering the Neo-Assyrian Influence on Ceramic Bowls in the Iron Age Levant, Bulletin of Ancient Orient Museum 29-30: 33-50.