研究の背景・目的

今日、我々の中東理解は、「古代のロマン」と「地政学的イスラーム」とに二極分化しており、その意味で、知の全体性を欠いている。中でも、中東社会の一方の本源を成す遊牧部族社会は、歴史的・地理的・民族的景観の一つとして矮小化され、人類学的な記述を除けば、厳密な意味での知の対象となり得ていない。この状況を打破するには、「肥沃な三日月弧」外側の大乾燥域に点在する先原史遊牧民の具体的足跡を丹念に拾い集め、歴史の中に正確に位置付けることが必要となる。

本研究は、1)アラビア半島先原史遊牧民の遺跡調査を通して、中東部族社会の起源問題を、従来の類推・敷衍レベルの間接的論議から、正確な年代と具体的な遺跡名を伴う実質的論議へと誘導し、2)中東社会の史的特質を遊牧部族社会の形成過程にまで遡って解明することを、目的とする。中東社会の最も内奥に潜む、中東社会ならではの史的特質。それを探り当てたい。


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