赤堀 雅幸(あかほりまさゆき)

1988年から1991年にかけてエジプトに留学し、西部砂漠に暮らす定着遊牧民の調査を実施しました。以来、アラブの部族組織、とりわけ部族に編入される多種多様な人々の帰属のあり方について研究しています。

そのなかでも、聖者の末裔がベドウィンとなって部族に編入される状況に関心を抱き、イスラームの聖者崇敬の研究を展開し、さらにスーフィズム・聖者崇敬複合と名付けた信仰と実践のあり方について共同研究を推進してきました。近年はキリスト教にも対象を広げ、聖遺物信仰にも目を向けています。それとともに調査地も、トルコ、ウズベキスタン、中国、インドネシアなど複数の国にも広がってきました。

考古学の調査隊との関わりは、最初のエジプト留学の時にルクソールやギザでお仕事ぶりに接したのが始まりで、1996年には東京大学東洋文化研究所の松谷敏雄先生が率いる調査隊とシリアのジャズィーラ地方で1ヶ月ほどを過ごし、2009年には国士舘大学イラク古代文化研究所の大沼克彦先生を代表とする研究プロジェクトの一環として同地方での調査に参加しました。

人類学の部族概念は、現状において考古学や政治学で用いられる同概念との間に落差があり、本科研では人類学と考古学との間でそうした概念の架橋をできればよいなと考えています。


主な著書・論文
・赤堀雅幸編(2021)『ディアスポラのムスリムたち:異郷に生きて交わること』上智大学イスラーム研究センター、iv+88頁。
・赤堀雅幸編(2021)『中東に生きる宗教的少数派の人々:その暮らしと祭り』SIAS Lecture Series 5、上智大学イスラーム研究センター、iv+84頁。
・赤堀雅幸(2021)「名誉は暴力を語る:エジプト西部砂漠ベドウィンの血讐と醜聞」田中雅一・嶺崎寛子編『ジェンダー暴力の文化人類学:家族・国家・ディアスポラ社会』昭和堂、83–103頁。
・鈴木董・近藤二郎・赤堀雅幸編集代表(2020)『中東・オリエント文化事典』丸善出版、775頁。
・ティモシー・ミッチェル(2014)『エジプトを植民地化する:博覧会世界と規律訓練的権力』大塚和夫・赤堀雅幸訳、法政大学出版局、348頁。