河合 望(かわい のぞむ)
1988年よりエジプトのルクソール(古代テーベ)西岸、ギザ、ダハシュール北、アブ・シール南などの古代エジプト王朝時代の遺跡の考古学的発掘調査に参加してきました。これらの現地調査を通じて古代エジプト新王国時代の埋葬習慣、政治史、文化史を研究対象としています。特に、第18王朝時代後半のアメンヘテプ3世の治世からツタンカーメン王の治世とその直後にかけての古代エジプト史の一大画期である「アマルナ時代」について考古資料と同時代の文献史料、図像資料を総合して解明することを主なライフワークとしています。また、2001年よりアブ・シール南丘陵遺跡の発掘調査主任として発掘調査を指揮し、前3千年紀初頭の初期王朝時代の石積遺構、中王国時代の岩窟遺構、第2中間期の墓、新王国時代の墓、末期王朝時代の祭祀の痕跡など様々な遺構を発見し、古代エジプトの聖地の形成と発展について明らかにしました。さらに、新王国時代の行政経済の中心であったメンフィスの墓地であるサッカラの同時代の墓地の考古学的調査が、同時代のテーベと比較してあまり進展していないことから、2015年より研究代表者として科学研究費補助金基盤研究(B)の助成を受け、北サッカラ遺跡で踏査を開始し、約10万㎡の未知の新王国時代の墓地を発見することに成功しました。また、その結果を受け、2017年に北サッカラ台地の東側斜面に新たな発掘調査を開始し、2019年に紀元後1世紀頃のローマ支配期のカタコンベ(集団地下墓地)を発見しました。カタコンベに隣接して王朝時代の墓が存在していることが確認されており、南北に約1kmの範囲で広大な墓地が存在しているとみられます。今後その墓地の発掘調査を大規模に展開していく予定です。
主な論文
・Kawai, N. (in press) “Tutankhamun in Heliopolis,” In Beloved of Seshat: Essays in Honour of Fayza Heikal, London: Golden House Pub<
・河合 望 (2020)「サッカラ遺跡における新王国時代の墓地の分布と新たに発見された墓地について」、吉村作治(編)『オシリスへの贈物:エジプト考古学の最前線』、雄山閣、pp. 30-39.
・Kawai, N. (2019) “The statues of Lioness Goddess at the Rock-Cut Chambers at Northwest Saqqara and Their Funerary Cult in the Middle Kingdom Egypt,” In Proceedings of the International Workshop on Women’s Religious and Economic Roles in Antiquity, pp. 63-71. Tokyo: Chuo University.
・Kawai, N. and Kondo, J. (2017) “Discovered, Lost, Rediscovered: Userhat and Khonsuemheb,” Egyptian Archaeology, vol. 50, pp. 12-16.
・Kawai, N. (2015) “The New Kingdom Tomb Chapel of Isisnofret at North Saqqara,” In Quest for the Dream of the Pharaohs: Studies in Honour of Sakuji Yoshimura, Supplément aux annales du service des antiquiteés de l’Égypte Cahier no. 43 69–90.
・Kawai, N. (2013) “Some Remarks on the Funerary Equipment from the tomb of Amenhotep III (KV 22),” In Archaeological Research in the Valley of the Kings and Ancient Thebes, Tucson: University of Arizona Egyptian Expedtion, pp. 149-172.
・Kawai, N. (2011) “An early cult centre at Abusir-Saqqara? Recent discoveries at a rocky outcrop in north-west Saqqara,” In Egypt at its Origins 3: Proceedings of the Third International Conference “Origin of the State. Predynastic and Early Dynastic Egypt” London, 27th July – 1st August 2008, pp. 801-830.
・Kawai, N. (2010) “Ay versus Horemheb: The Political Situation in the Late Eighteenth Dynasty Revisited,” Journal of Egyptian History, vol. 3-2, pp. 261-292.
・Kawai, N. (2006) Studies in the Reign of Tutankhamun, Department of Near Eastern Studies, The Johns Hopkins University, Ann Arbor: University Microform International.