上杉 彰紀(うえすぎ あきのり)

 私はこれまで南アジア、特にインド、パキスタンを中心に調査・研究を進めてきました。時代的には西暦紀元前4000年頃から紀元後1000年頃、時代区分でいうと銅石器時代、青銅器時代、鉄器時代、古代、中世初期までをカバーしており、「南アジア世界」がどのような過程を経て形成されてきたのか考古学的に研究しています。その中には世界的にも著名なインダス文明も研究対象として含まれています。南アジアでの研究の一方で、バハレーンやトルコでも青銅器時代の遺跡の調査に参加し、南アジアとの交流史研究や都市社会形成過程の比較研究も行っています。

こうしたこれまでの研究の背景から、このプロジェクトではアラビア半島の遊牧民世界が周辺地域とどのように関わってきたのか考えてみたいと思っています。アラビア半島は内陸の砂漠地帯だけでなく、その縁辺部において広大な海域と接しており、海洋交通路の発達を通じて南アジア、イラン高原、メソポタミアなどの周辺地域と深く関わってきました。当然、そういった沿岸部の交通拠点は内陸部とも繋がっており、複雑な社会と多様な歴史的展開が生み出されてきたのがアラビア半島と考えられます。南アジア方面とのつながりを軸に、アラビア半島の多面的な世界像について理解を深めたいと考えています。


主な著書・論文
・Akinori Uesugi (ed.) 2018. Current Research on Indus Archaeology. Research Group for South Asian Archaeology, Archaeological Research Institute, Kansai University, Osaka.(編著)
・Akinori Uesugi (ed.) 2018. Iron Age in South Asia. Research Group for South Asian Archaeology, Archaeological Research Institute, Kansai University, Osaka.(編著)
・Akinori Uesugi 2018. Ceramics and Terracotta Figurines from Balochistan of the Katolec Collection. Katolec, Tokyo.(単著)
・上杉彰紀『中洋言語・考古・人類・民俗叢書2 インダス考古学の展望 インダス文明関連発掘遺跡集成』総合地球環境学研究所 インダス・プロジェクト、2010年3月(単著)
・Akinori Uesugi, Manmohan Kumar and V. Dangi 2018. "Indus Stone Beads in the Ghaggar Plain with a Focus on the Evidence from Farmana and Mitathal", in D. Frenez, G.M. Jamison, R.W. Law, M. Vidale and R.H. Meadow eds. Walking with the Unicorn: Social Organization and Material Culture in Ancient South Asia, Jonathan Mark Kenoyer Felicitation Volume. Archaeopress, Oxford. pp. 568-591.(論文)