2022/01/10
サウジアラビアでの調査
2021年11月18日〜12月29日の日程で、サウジアラビア北西部タブーク州に所在するワディ・グバイ遺跡の調査を実施しました。今回の調査では、遺跡北半部を流れるワディ・グバイ涸河沿いにダム、カイト(動物を追い込んで捕獲するための施設)、パンサートラップ(猫か動物捕獲用の罠)、住居址を複数確認し、この遺跡に暮らした人々の生活の実態に迫ることのできるデータを得ることができました。
ダム遺構は貯溜式灌漑のための石列で、山間部から流れてくる水を低地で堰き止めて、植物栽培を行うための施設と考えられます。また、動物狩猟用のカイト遺構は、遺跡内各所に点在する岩絵に描かれた狩猟場面と関係するものと考えられ、時期はまだ不明ながらも狩猟がこの遺跡に暮らす人々の生業基盤の一つとなっていたことをうかがわせています。パンサートラップは、動物を狩猟する際に使用するパンサーを捕獲するためのものと考えられますが、岩絵にもアイベックスの狩猟場面にパンサーと思しき動物が描かれた事例が多く、カイト遺構とともに狩猟活動の一端を垣間見せています。住居址はカイト遺構周辺の山頂高位部に群集するかたちで発見されています。
これらの遺構群の時期については現在発掘調査で得られた炭化物試料の年代測定を進めているところですが、銅石器時代から青銅器時代を中心とする時期のものであると考えています。これらの遺構群の確認によって、これまで葬祭遺構中心であったワディ・グバイ遺跡に関する理解が大きく変わることになりました。なお、詳細は2022年3月12・13日に開催予定の日本西アジア考古学会主催の西アジア発掘報告会で報告の予定です。