古畑 徹(ふるはた とおる)

所属:人間社会研究域国際学系(古代文明・文化資源学研究所 兼任)
職階:特任教授
専門:前近代東北アジア史、東アジア国際交流史
※金沢大学:研究者情報


研究内容

 私の専門は考古学ではなく、文献史学です。その私がこの研究所の兼任教員となっているのは、現在、メインの研究テーマとして取り組んでいるのが渤海国(698~926)だからです。

 渤海国は、領域が現在の中国・朝鮮(韓国・北朝鮮)・ロシアの国境を跨ぎ、かつ居住諸種族もそれらの構成民族の源流の一部となっているため、関連国家間、とりわけ中国と韓国・北朝鮮の間で激しい「歴史の争奪」の対象となっています。これを「歴史論争」ともいいますが、私の問題意識は、そうした渤海国をめぐる「歴史論争」をいかに克服するか、にあります。

 ただ、渤海国についての文献史料は極めて乏しく、考古学の成果なしには研究を進められません。そのため私は、ここ10数年来、考古学の研究者と文献史学の研究者がチームを組んで渤海史の解明に取り組むプロジェクトを組織してきました。現在進めている基盤研究(A)「高句麗・渤海史像の再構築についての総合的研究」も、中国・韓国の研究者との交流を深めながら、複数の広域史のなかで多元的に渤海国を描き出すことで、「歴史論争」の克服を試みようとするものです。

 極めてマイナーな渤海史ではありますが、考古学・文献史学融合の最前線として、多くの皆様に注目していただければ幸いです。


主な著書・論文

  • 古畑徹(著)・クォン ヨンチョル(訳) 2025 『발해국이란 무엇인가 (渤海国とは何か)』ソウル、民俗苑。
  • 古畑徹 2024 「발해승 정소의 여행: 『입당구법순례행기』의 「곡일본국내공봉대덕령선화상시병서」를 소제로(渤海僧貞素の旅―『入唐求法巡礼行記』の「哭日本國内供奉大德靈仙和尚詩并序」より―)」鄭淳一(編)『승려와 불교의 동아시아 해역 교류 (僧侶と仏教の東アジア海域交流)』ソウル、景仁文化社、211-248頁。
  • 古畑徹 2024 「渤海国の高氏について―渤海国の対外政策と関連させて―」中野高行・柿沼亮介編『古代の渤海と日本』東京、高志書院、51-74頁。
  • 古畑徹 2024 「渤海史上における「安史の乱」の評価について」『唐代史研究』27、79-114頁。
  • 古畑徹(編) 2022 『高句麗・渤海史の射程——古代東北アジア史研究の新動向―』。東京、汲古書院。
  • 古畑徹 2021 『渤海国と東アジア』。東京、汲古書院。
  • 鹿島正裕・倉田徹・古畑徹(編) 2020 『国際学への扉──異文化との共生に向けて〔三訂版〕』。東京、風行社。
  • 古畑徹 2016 『渤海国とは何か』東京、吉川弘文館。