覚張隆史(がくはりたかし)
所属:古代文明・文化資源学研究所(専任)
職階:准教授
専門:考古分子生物学、文化財科学、動物考古学、馬学
※金沢大学:研究者情報
研究内容
分子生物学および地球化学の分析手法を、遺跡出土人骨・動物骨に応用し、考古学・人類学研究を推進してきました。分子生物学研究において、日本列島の縄文人骨(伊川津貝塚)から世界で初めて全ゲノム配列を取得し、大陸集団との比較ゲノム解析によって縄文人の起源に関する新たな仮説を提示しました。また、縄文人・弥生人・古墳人・現代日本人の比較ゲノム解析によって、現代日本人の遺伝的特徴が古墳時代に大枠が形成されたこと、弥生時代の初頭に大陸から渡来した集団とは別に弥生時代終末から古墳時代初頭に「第3の集団」が渡来したことを実証し、「日本列島人の三重構造モデル」を世界で初めて国際学術誌上で公開しました。地球化学研究では、歯エナメル質のハイドロキシアパタイトに含まれるストロンチウム(Sr)や酸素など多種元素同位体比測定による哺乳動物の出生地推定や食性復元をこれまで実施してきました。特に、藤原京造営期において利用されていた家畜馬が東日本内陸部から持ち込まれたことを示し、大宝律令に記されていたとされる遠隔地の牧から朝廷へ献上する貢馬制度が大宝律令以前まで遡る可能性を示しました。この様に、生物遺体から最新の分析手法をいち早く応用し、これまで復元が不可能と考えられていた考古学・人類学における仮説の再評価を行ってきました。
主な著書・論文
- Cooke, N.,…, T. Gakuhari, S. Nakagome 2021. Ancient Genomics Reveals Tripartite Origins of Japanese Populations. Science Advances 7(38): eabh2419.
- Gakuhari, T., S. Nakagome, …, H. Oota 2020. Ancient Jomon Genome Sequence Analysis Sheds Light on Migration Patterns of Early East Asian Populations. Communications Biology 3(1): pp.1-10
- McColl, H., F. Racimo, L. Vinner, F. Demeter, T. Gakuhari, …, E. Willerslev 2018. The Prehistoric Peopling of Southeast Asia. Science 361(6397): 88-92.