久米正吾(くめしょうご)

所属:東京大学総合研究博物館 学術専門職員
職階:客員研究員
専門:中央アジア考古学・西アジア考古学


研究内容

 現在、中央アジアに位置するキルギスとウズベキスタンの山岳・山麓地帯の遺跡で発掘調査をおこなっています。5000年前頃の青銅器時代に農耕牧畜文化が西アジアと中国から波及し、中央アジアの山岳・山麓地帯に食料生産経済が初めて成立した背景とその歴史的意義について、環境への適応、文化交流あるいは人の移動の観点から調べています。この調査研究をとおして、遊牧国家という中央ユーラシア地域を歴史的に特徴づける政治組織の基層形成について理解を深めたいと考えています。

 中央アジアで発掘調査をおこなう前は、シリアやヨルダン、アゼルバイジャンなど西アジア・コーカサス地域での発掘調査に参加し、新石器時代から青銅器時代にかけての先史・古代社会における集団の階層化や社会の複雑化あるいは農耕牧畜の開始と波及に関する研究に取り組んでいました。また、アフガニスタンや中央アジア諸国を中心とした文化遺産保護国際協力事業の企画運営等にも携わってきました。

 こうした経験を踏まえ、当研究所に所属する新旧両大陸の様々な地域を専門とする考古学研究者や近年の考古学研究において目覚ましい発展を遂げる自然科学分析を専門とする自然科学系研究者との連携をとおして、新石器時代以降のユーラシア大陸各地に生まれた農耕牧畜社会の発展過程の多様なあり方について理解を深めたいと考えています。また、海外考古学調査の持続可能な発展に向けて、調査をおこなうキルギスやウズベキスタン等での文化遺産の保護と活用に向けた実践的な取り組みも模索しています。


主な著書・論文

  • 久米正吾・新井才二・宮田佳樹・藤澤明・新井才二・コミルジョン ラヒモフ・ヒクマトゥッラ ホシモフ・ボキジョン マトババエフ 2024 「原シルクロードの形成―ウズベキスタン、ダルヴェルジン遺跡(第4次)の発掘調査(2023年)―」日本西アジア考古学会(編)『第31回西アジア発掘調査報告会報告集』、164-168頁。つくば、日本西アジア考古学会。
  • 久米正吾 2023 「草原の農耕」小松久男・梅村坦・坂井弘紀・林俊雄・前田弘毅・松田孝一(編)『中央ユーラシア文化事典』、232-233頁。東京、丸善出版。

キルギス、天山山脈内のナリン市郊外に位置するアイグルジャル2・3遺跡
写真1:キルギス、天山山脈内のナリン市郊外に位置するアイグルジャル2・3遺跡(撮影:早川裕弌)

写真2:モル・ブラク1遺跡。キルギス、天山山腹の2400m地点に位置する牧民キャンプ址
写真2:モル・ブラク1遺跡。キルギス、天山山腹の2400m地点に位置する牧民キャンプ址

ダルヴェルジン遺跡(ウズベキスタン、フェルガナ盆地)での現地大学生への発掘調査説明会
写真3:ダルヴェルジン遺跡(ウズベキスタン、フェルガナ盆地)での現地大学生への発掘調査説明会