佐々木由香(ささきゆか)
所属:古代文明・文化資源学研究所(専任)
職階:特任准教授
専門:植物考古学、環境考古学
※金沢大学:研究者情報
研究内容
人間は周囲の植物資源をどのように選択して利用し、また改変してきたのかという人間と植物の関係史を研究テーマとしています。森林資源に恵まれた日本列島では、縄文時代以降、森林資源から食料を得ていただけでなく、それらを利用して、構築物や、木製品、編組製品、漆製品などを製作してきました。さらに、約8000年前以降の居住空間の周りでは、資源をより利用しやすくするために人間が関与した植生を作っていたことが一部の地域では明らかになりつつあります。
こうした人と植物の関わり史を研究するためには、考古学的に遺構・遺物を検討して時空間的に位置付けるだけでなく、自然科学分析の成果を用いて植物遺体自体や周辺の自然環境を明らかにし、考古遺物の年代 と一緒に議論する必要があります。そのために、主に種子・果実や葉などの大型植物遺体の分析や、樹種同定、レプリカ法による土器圧痕分析、土器付着炭化植物遺体の分析を自ら実践し、人間が資源として利用した植物遺体を検討してきました。また博物館や埋蔵文化財調査機関などと連携した共同研究で当時の技術知を解明するために、自然科学分析で明らかにした素材や植物の知識と、民俗調査で得られた知識を合わせて、実験や製品を復元する作業を行なっています。ニワトコなどの現生種実を用いた実験を通して過去の植物資源利用の新たな側面を見いだしたり、編みかごなどの製作を通じて遺物の観察だけではわからない技術の様相を発見したりしています。研究所では、所属されている様々な時代・地域の考古学研究者や自然科学研究者、地元の埋蔵文化財に携わる研究者と連携して、新たなフィールドも見つけていきたいと考えています。
主な著書・論文
- 佐々木由香 2024 「植物の利用からわかってきたこと」阿部芳郎編『縄文時代を解き明かす』、112-144頁。東京、岩波書店。
- 佐々木由香 2022 「環境変化と植物利用―縄文弥生移行期の南関東地方―」長友朋子他(編)『南関東の弥生文化 東アジアとの交流と農耕化』93-109頁。東京、吉川弘文館。
- Noshiro, S., Y. Sasaki and Y. Murakami 2021. Importance of Quercus gilva(イチイガシ)for the Prehistoric Periods in Western Japan. Japanese Journal of Archaeology 8(2): 133-156.
- 佐々木由香 2020 「植物資源利用からみた縄文文化の多様性」『縄文文化と学際研究のいま』(季刊考古学別冊31)、69-84頁。
- 佐々木由香 2019 「土器種実圧痕から見た日本における考古植物学の新展開」庄田慎矢(編)『アフロユーラシアの考古植物学』、180-194頁。東京、クバプロ。