上田長生(うえだひさお)
所属:人間社会研究域人文学系(古代文明・文化資源学研究所 兼任)
職階:教授
専門:日本近世史
※金沢大学:研究者情報
研究内容
大学院以来の研究テーマは、江戸時代から明治期の社会と天皇との関係です。この課題に接近するために、幕末維新期に国家によって大きく改変された天皇陵を素材に研究を進めきました。近代化過程で新たな国家祭祀・イデオロギーが段階的に構築された政治史レベル、江戸時代には行方も分からなくなっていた天皇陵の所在地を考証する知識人レベル、天皇陵が所在する村・町での民衆の動きという社会レベルの3つの位相について、相互の関係や展開過程を解明してきました。
金沢大学に着任後は、加賀藩領(現在の石川県・富山県域の大半)の藩領社会の構造と支配のあり方を解明するために、中間支配機構である十村制の特質と展開を主たる対象に研究を進めています。石川県・富山県の史料保存機関や旧十村家に残る膨大な文書を網羅的かつ横断的に調査し、十村が集団的に郡村を支配する様相や、その近代への展開過程を検討しています。
また、2024年1月1日の能登半島地震の発生を受け、石川県内の日本史研究者・文化財担当者・学芸員の皆さんと「いしかわ歴史資料保全ネットワーク(いしかわ史料ネット)」を結成し、国の文化財防災センターが進めている文化財レスキュー事業に参加してきました。そこでレスキューされた古文書の整理・調査を、いしかわ史料ネットの会員や学生・大学院生の皆さんと進めています。能登の豊かな歴史・文化の発信を進めつつ、被災資料の保全・活用に取り組んでいきたいと思います。
主な著書・論文
- 上田長生 2025 「19世紀の藩領社会・中間層と藩権力―加賀藩の地域的入用と備荒貯蓄―」歴史学研究会編『歴史学研究』1067。
- 上田長生 2025 「「真陵」のゆくえ―近代日本の陵墓治定をめぐる相克―」歴史学研究会編『歴史学研究』1062、124-130頁。
- 上田長生 2024 「能登半島地震といしかわ史料ネットの活動」日本史研究会編『日本史研究』746、124-130頁。
- 上田長生 2022 「魚肥と藩領社会」武井弘一編『イワシとニシンの江戸時代』吉川弘文館、71-101頁。
- 上田長生 2020 「加賀藩十村の身分意識」加賀藩研究ネットワーク編『加賀藩研究』10、24-40頁。
- 上田長生 2020 「加賀藩十村制の確立過程と相談所」日本史研究会編『日本史研究』694、30-59頁。
- 上田長生 2012 『幕末維新期の陵墓と社会』、思文閣出版


