藤井純夫(ふじいすみお)

所属:古代文明・文化資源学研究センター(専任)
職階:特任教授
専門:西アジア考古学
※金沢大学:研究者情報


研究内容

 「肥沃な三日月弧」外側の大乾燥地で、先史遊牧民遺跡の調査を続けています。調査の目的は、(先史時代の末から現代に至るまで一貫して中東社会を特徴付けている)遊牧部族の形成過程を明らかにすることにあります。中東社会の最も内奥に潜む、中東社会ならではの史的特質。それを探りあてたいというのが、私の研究の学術的「問い」です。

 主な調査区は、ヨルダン南東部のジャフル盆地(1995~)とサウジアラビア北西部のタブーク高原(2012~)です。一時はシリア中部のビシュリ山系(2007~2011)でも調査していましたが、現在は中断しています。年代的には、「肥沃な三日月弧」外側の乾燥地に家畜ヤギ・ヒツジが初めて導入された先土器新石器時代Bから、本格的な部族社会が成立したとされる前期青銅器時代までの、約5000年間が対象です。そのため、先土器新石器時代の移牧出先集落(写真1)から、後期新石器時代の屋外祭祀施設(写真2)、銅石器時代の半農半牧集落(写真3)、前期青銅器時代遊牧家族のキャンプ址(写真4)など、様々な遺跡を発掘してきました。

 約30年に及ぶ調査を振り返って思うのですが、沙漠の中には沢山の歴史や文化が埋もれています。定住域の大都市遺跡だけが人類の文化遺産ではありません。長い道程、酷暑、砂嵐、水の補給、安全の確保、その他諸々辛いことばかりですが、発見の喜びはそれをはるかに上回ります。これからも沙漠の調査を続けていきたいと思います。


主な著書・論文

  • Fujii, S. (2020) Late Neolithic cultural landscape in the al-Jafr Basin, southern Jordan: A brief review in context. Studies in Ancient Art and Civilization 24: 13-32.
  • Fujii, S. (2020) Pastoral nomadization in the Neolithic Near East: Review from the Viewpoint of social resilience. In: Y. Nara and T Inamura (eds.), Resilience and Human History: Multidisciplinary Approaches and Challenges for a Sustainable Future, 65-83. Singapore: Springer.
  • Fujii, S., Adachi, T. and Nagaya, K. (2019) Harrat Juhayra 202: an Early PPNB flint assemblage in the Jafr Basin southern Jordan. In: Astruc, L. et al. (eds.), Near Eastern Lithic Technologies on the move; Interactions and contexts in Neolithic Traditions, 185-197. Nicosia: Astrom Editions.
  • Fujii, S. (2018) Bridging the enclosure and the tower tomb: new insights from the Wadi al-Sharma sites, north-west Arabia. Proceedings of Seminar for Arabian Studies 48: 83-98.
  • 藤井純夫 (2018) 「食料生産革命とレジリエンス」奈良由美子・稲村哲也編著『レジリエンスの諸相』95-110頁, NHK出版

ワディ・アブ・トレイハ遺跡(先土器新石器時代の移牧出先集落、ヨルダン)
写真1:ワディ・アブ・トレイハ遺跡(先土器新石器時代の移牧出先集落、ヨルダン)

アウジャ1号遺跡(後期新石器時代の屋外祭祀施設、ヨルダン)
写真2:アウジャ1号遺跡(後期新石器時代の屋外祭祀施設、ヨルダン)

ハラアト・ジュハイラ2号遺跡(銅石器時代の半農半牧集落、ヨルダン)
写真3:ハラアト・ジュハイラ2号遺跡(銅石器時代の半農半牧集落、ヨルダン)

ワディ・シャルマ6号遺跡(前期青銅器時代遊牧民家族のキャンプ址、サウジアラビア)
写真4:ワディ・シャルマ6号遺跡(前期青銅器時代遊牧民家族のキャンプ址、サウジアラビア)