2020/02/25
国際シンポジウム「アラビア半島の考古学―オーストリア隊と日本隊の最新の成果から―」が開催されました
2020年1月31日(金)、東京文化財研究所(東京都台東区)にて国際シンポジウム「アラビア半島の考古学―オーストリア隊と日本隊の最新の成果から―」が開催されました。このシンポジウムには、講演者としてウィーン大学よりマルタ・ルチアーニ准教授を招へいしました。ルチアーニ氏はトルコ、シリア、イラクといった西アジア諸国の遺跡調査で数々の業績をあげられてきましたが、2014年からはサウジアラビア北西部、クレイヤ遺跡の発掘調査を指揮されています。この遺跡は本科研費プロジェクトの主要な調査地の一つであるワディ・グバイ遺跡群に隣在しており、おそらく遺跡群が形成されたのと同じ時代に、数多くの人びとが暮らしていた定住農耕民の遺跡と考えられています。
シンポジウムでは、ルチアーニ氏からこれまでの調査と研究の成果が示され、「都市」とも言うべきクレイヤ遺跡の性格について、活発な討議が行われました。我われの追うアラビア半島における原史遊牧文化の変遷を定住農耕文化との関連から考察するうえで、たいへん示唆に富む内容となりました。また、本科研費プロジェクトからは藤井、安倍、長谷川、徳永の4名がそれぞれのフィールド調査による最新の研究成果を報告し、時間的には先史時代から初期イスラームまで、空間的にはサウジアラビア北西部から西は紅海沿岸、東はアラビア湾バハレーン島まで、範囲を広げて議論が交わされました。
ルチアーニ氏率いるオーストリア隊と本科研費プロジェクトが擁する複数のフィールド調査との協力・連携関係をより確かなものにし、その意義を互いに改めて認識する機会となりました。