所長ご挨拶
金沢大学古代文明・文化資源学研究所は、本学では初となる人間社会研究域を母体とする研究所として令和4年4月1日に設立されました。特定の地域に偏らず、世界各地の古代文明を対象に現地フィールドワークを中心に調査研究を行い、そこに自然科学的な分析手法を積極的に取り入れ、文理医融合型の先端的考古学研究をリードする世界的研究拠点を形成することを目標に掲げています。
本研究所は3つの部門から構成されます。まず、世界各地の遺跡での発掘調査や出土品調査を行う研究者が中心となる「考古学部門」、次に、自然科学的なアプローチで遺跡や遺物の調査分析を進める「考古科学部門」、そして、古代文明遺跡などの文化遺産を新たな価値の源泉ととらえなおし、文化資源活用の観点から研究を進める「文化資源学部門」です。
もちろん、この3部門は排他的な関係にあるわけではありません。実際には、個々の研究者は、従来のオーソドックスな考古学研究や発掘調査だけでなく、生化学や同位体地球化学などのアプローチを援用し、さらには、対象とする遺跡の保存・修復や活用にも取り組むといったように、3つの部門を跨ぐように研究を進めています。
本研究所には専任教員、特任教員に加え、数多くの客員教員や客員研究員が在籍しています。そのフィールドは、中国、西アジア、エジプト、中米など世界中に広がっており、各地の考古学研究の最前線で大規模な国際共同研究を展開しています。コロナ禍で停滞していた海外調査もほぼ旧に復し、次々に重要な研究成果が得られつつあります。
世界各地の調査で発見された遺構や遺物は、研究者のみならず、人類共有の貴重な文化資源として保存・活用されなければなりません。そうした社会的要請を受け、本研究所のメンバーは、遺跡整備や博物館建設などの取り組みにも積極的に参画し、我が国の国際貢献の一翼を担っています。
言うまでもなく、調査・研究によって得られた学問的成果は学界の中だけに留めておくべきものではありません。本研究所では国際シンポジウムなどのイベントを国内あるいは海外で随時開催するだけでなく、研究所独自の英文モノグラフやジャーナルの刊行を通じて海外発信に努めてきました。また、次世代の研究者を育成すべく、国内外で若手向けセミナーなどを継続的に開催しています。そうした一連の活動を通じて、名実ともに世界トップレベルと認知される拠点の形成を目指します。皆さまには引き続き宜しくご指導、ご支援賜りますようお願い申し上げます。

古代文明・文化資源学研究所 所長
中村 慎一
