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着任のご挨拶
センター教員の皆様、金沢大学の学生、院生、教職員をはじめとするホームページ閲覧者の皆様、4月1日にセンター専任教員として赴任いたしました中村誠一です。どうぞよろしくお願いいたします。
私の専門は、中米のマヤ文明の研究で、考古学を中心とした学際的なアプローチによる王朝史などの歴史的復元を専門としています。ホンジュラスのコパン、グァテマラのティカル、キリグアといった世界遺産の直接の発掘調査、修復保存にも携わりますが、同時に、マヤ遺跡を有するメキシコ、グァテマラ、ベリーズ、エル・サルバドル、ホンジュラスという5ヶ国がこれらの文化遺産とどのように係わり、保存と活用を進めて行こうとしているのか、その研究も行っています。遺跡はマヤ文明の栄えた国々の人たちにとっては単なる史跡ではなく、国や地域の開発のための直接的な資源です。開発途上国において文化遺産を後世に保存継承していくためには、その資源としての価値と有用性を人々が認識することが必要不可欠で、保存継承の理念的な重要性を説くだけでは、遺跡の保護保存というのは難しいという点を30年近い現地調査の中で体験してきました。
さて、我が国の本格的なマヤ文明研究は、欧米諸国と比べると100年遅れて1980年代にスタートしましたが、近年、モーレツな勢いでそのレベルに追いつこうとしています。マヤ研究という面でいえば、金沢大学は、昨年グァテマラの文化遺産の調査、修復、保存、管理、運営を統括する唯一の政府機関であるグァテマラ文化スポーツ省文化自然遺産副省と交流協定と覚書を締結し、日本ではどこの大学もなしえなかった大きな一歩を踏み出しました。双方の相互訪問もおこなって、今年度からティカル遺跡の「北のアクロポリス」という、都市の中核地帯に存在する王朝の精霊地で、実に43年ぶりの考古学プロジェクトの実施を許されました。ティカルは世界複合遺産でありマヤ文明の代名詞となっている遺跡でもありますが、グァテマラ共和国の象徴的遺跡でもあり、その中核部の発掘調査や修復保存を外国の大学・研究機関に許すというのは、1956~1969年のペンシルバニア大学に次ぎ2番目のきわめて例外的なことです。プロジェクトディレクターとして、グァテマラ政府の期待に添えるように全力を尽くしたいと決意を新たにしております。
(撮影:中村誠一) |
© JICA、(株)山下設計