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着任のご挨拶:山形眞理子

 私の専門は東南アジアの考古学です。おもな研究テーマは、東南アジアの古代国家・林邑(チャンパ)について、その出現の過程と実像を考古学の面から解き明かすことです。1993年以来、林邑王都とされるベトナム中部クァンナム省チャーキュウ遺跡で調査を行ってきました。

 初めてチャーキュウ遺跡を発掘した時、数平方メートルの小さな発掘区から出土した土器片が中国系の印紋陶であったり、インド由来の回転紋土器であったりして、遺物の背後に東アジアと南アジアに及ぶダイナミックな人の動きが見え、圧倒される思いがしました。ベトナム中部カインホア省カムラン湾岸に位置するホアジェム遺跡で鉄器時代の甕棺墓を調査した時にも、南シナ海をはさんで向かい合うフィリピンと同じ型式の土器が副葬されていることに驚きました。東南アジアの考古学では、現代の国境や民族分布にとらわれない、広い視野からの発想が求められます。

 海外調査は現地の人々との協働なくして実現しません。私の場合、ベトナム人共同研究者と一緒に調査研究を積み上げてきた、その成果と達成感が次のフィールドワークに向かう原動力となっています。それに加えて、ベトナム独特の美しい風景、人々の優しさ、美味しい食べ物。考古学という学問のみならず、遺跡や遺物が残された地域と、そこに暮らす人々に魅了されてきたような気がします。

 文化資源学とは、地域の歴史や風土と深く結びつく文化資源について、ローカルだけで完結しない価値を見出し、それをグローバルに発信し活用するマネジメント能力を育成しようとする、新たな学問分野であるといえます。文化資源学の可能性を信じて、学生の皆さんと切磋琢磨していきたいと思っています。

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