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着任のご挨拶:秦 小麗

 私の專門は中国考古学です。主な研究テーマは二つに分けられます。第一の研究テーマは中国古代国家形成過程における地域間動態とその背景を解明するすることです。具体的に言えば、中国古代の夏時代と殷周時代前期を主な研究対象とします。10数年前から、中国河南省中北部にある府城遺跡と山西省西南部にある東陰遺跡で発掘調査を行って来ました。両遺跡の発掘にあたって、出土した土器片を分析すると、各地域社会で特徴的な土器を製作していた時代から、広域に規則性の高い土器を製作する時代に変化したことが分かりました。また煮沸器のサイズもほぼ揃うことを明らかにしました。遺物の変化には、人間集団の動き、生産体制、経済や政治体制が背景にあることを重視すべきと思いました。考古学研究には遺跡や遺物ごとの細かい分析も大切ですが、地域を全般的に把握する広い視野によって生み出したアイデアが、もっと必要だと感じています。第二の研究テーマは、古代の装身具です。東アジアの視野で見れば、中国新石器時代の遺跡では腕輪が普遍的に出土しますが、日本の縄文時代では耳飾りが普遍的に出土します。この違いはどこから来るのでしょうか?私はこれまでに、中国古代の装身具の分析を通して性別、年齢、地域などによって装身具の付け方に違いがあることを明らかにして来ました。また古代中国では、装飾の意味にとどまらず、当時の社会階層、身分、儀礼規範などと深く関わっていたことも分かりました。分析にあたっては、現在少数民族を参考しながら、地域ごとの文化習俗、宗教儀礼や美学的な装飾習慣を比較する視点を大切にしてきたことは、研究を行う姿勢として大きな意味があったと思っています。

 どのテーマの研究でも出土した遺物の研究だけでは、十分ではありません。遺跡があるその地に生活しつづける人々の生活習慣、装飾習俗、年中行事など調査研究も重要です。これは文化資源という用語によって強調できるでしょう。従来の文化遺産、文化財という用語に、より新たな価値を取り入れた文化資源学は、グローバルゼーションの進展によって必要となってきた新たな学問分野とも言えます。私は新しい教員の一員として、これまでに積み重ねてきたフィールドワークの経験や人的関係、そして、カナダでの博物館の経験を生かし、みなさんと力を合わせて、新しいプログラムを模索しながら進めて行きたいと考えています。

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