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日本文化財科学会と奈良文化財研究所の研修に参加して

 2014年7月5、6日、奈良教育大学にて開催された第31回日本文化財科学会に参加しました。参加者は500名以上を数え、材質・技法、年代測定、古環境、産地同定、保存科学と文化財科学一般のカテゴリーに分かれ、口頭発表75名、ポスター発表107名という多数の発表のなか、活発な議論が交わされました。5日には、「東アジアの水田稲作文化」という、一般にも公開された特別セッションが開かれ、日本、中国、韓国の研究者による、水田稲作研究の最新成果が発表されました。まず、菅谷文則所長(奈良県立橿原考古学研究所)による、日本における正条植水稲移植開始時期の検証にはじまり、前日の7月4日に見学会のあった、弥生時代前期の水田遺跡が発見された奈良県御所市秋津・中西遺跡の発掘調査内容について、担当者の本村充保氏(奈良県立橿原考古学研究所)、同遺跡の水田構造と湛水機能の分析成果を稲村達也氏(京都大学)がそれぞれ発表されました。次に、金炳燮氏(韓国慶南発展研究院)が、韓半島南部の新石器時代から三国時代の水田遺構について、最新の研究状況を報告され、蒋楽平氏(浙江省文物考古研究所)は、中国浙江省における初期稲作文化の最新成果について発表をおこないました。


 本学からは、中村慎一副学長による、中国浙江省文物考古研究所との共同調査成果からみえてきた稲作専業化へのプロセス、小柳美樹客員准教授による、中国大陸における農耕社会の成立過程について、それぞれの見解を発表されました。その夜の懇親会では、さまざまな研究領域で活躍されている先生方と貴重な話ができ、多くの刺激を受けました。


秋津・中西遺跡の見学会

懇親会で研究者たちと

 翌日の7月7日と8日は、奈良文化財研究所にて開催された研修に、金沢大学大学院人間社会環境研究科の文化資源マネージャー養成プログラム学生とともに参加しました。今回の研修は、東京文化財研究所、奈良文化財研究所とキルギス共和国国立科学アカデミー歴史文化遺産研究所による、文化遺産国際協力拠点交流事業の一環で、「史跡整備と展示に関する人材育成ワークショップ」として、今年で7回目となります。一期生と二期生の7名は有村誠先生の指導のもと、すでに東京文化財研究所における二日間の研修に参加しましたが、私はその研修に参加できなかった二期生の呂夢さんとともに、奈良文化財研究所の研修に参加しました。

まず、キルギス共和国とアフガニスタン・イスラーム共和国の若手専門家6名とともに、奈良文化財研究所の小野健吉副所長による、世界文化遺産の史跡整備と展示に関する講義をうけた後、森本晋研究員からは、奈良文化財研究所の文化財保存と研究の状況について説明をうけました。そして、平城宮跡、平城宮跡資料館などを参観し、埋蔵文化財センターの保存修復科学研究室と環境考古学研究室の見学をおこないました。見学中には、キルギス共和国の若い研修生と互いに話を交わすことができ、文化遺産の保護と活用について意見交換をすることができました。

 今回、学会と研修に参加したことで、さまざまな分野で活躍する研究者らと出会い、新たな刺激を受けることができました。そして、今後、自身の研究をどのように進め、その成果をどういった形で教育に活かしていけるか、見つめなおす良い機会となったことが、最大の収穫となりました。


保存修復科学研究室の見学

研修をうける研修生たち

小野健吉副所長の講義

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