本文へジャンプ

English

ニュース

  • ホーム
  • コラム一覧
  • ドキュメント2013:課題ユニット「考古学と現代社会」のこれまで、これから1

ドキュメント2013:課題ユニット「考古学と現代社会」のこれまで、これから1

                                            吉田 泰幸

 国際文化資源学研究センターでは、いくつかの課題ユニットが立ち上げられています。その中のひとつ、「考古学と現代社会」立ち上げの経緯とこれまで、これからの活動についてお話しようと思います。「考古学と現代社会」ユニットはこの文章を書いている形態文化資源部門の教員である考古学者・吉田泰幸と、当センターの協力教員で伝承文化資源部門教員の文化人類学者・John Ertlが中心となっていて、部門を跨いだ活動、つまりは学際的な研究となっていますが、そうしたコラボレーションを意識して立ち上げた、というよりは、両者の共通の関心事である「縄文」を契機にはじまった活動に後から名前をつけた、という方が正しいです。

 吉田は日本列島の先史文化である縄文時代文化の研究をしていました、ではなくて今でもしていますが、日本の考古学では「学史」あるいは「研究史」を重視することが多く、細分化された研究分野の研究の歴史をトレースしていくだけでも、考古学とその時々の社会の関係に目を向けることになります。思えば、この時の経験が今の活動に繋がっているのでしょう。金沢大学に来てからは、若手研究者・大学院生を海外に派遣する「文化資源学フィールドマネジャー養成プログラム」を活用してベトナム韓国にて研究を行いました。両国ではその土地の考古学的研究もさることながら、先史考古学の扱い、それぞれの社会で先史考古学の成果がどのように資源化されているか、にも着目しました。
 ジョン・アートルはアメリカ出身の文化人類学者です。カリキュラム上、考古学が人類学の一部となっているアメリカの大学において、ネブラスカ大学ではピーター・ブリード先生、カリフォルニア大学バークレー校では羽生淳子先生という、日本の考古学に縁が深い先生が身近にいたものの、その時はあまり考古学を強く意識していなかったそうです。しかし能登半島での長期フィールドワークの最中、町づくり活動の中で考古学的発見が人々を動かしていく様子をみて、考古学的知識がどのように生み出されるのか、考古学はどのように世界を変えていくのか、そのプロセスに興味をもちはじめました。2012年度には「頭脳循環を加速する若手研究者海外派遣プログラム」を活用し、カリフォルニア大学バークレー校の羽生研究室での縄文時代遺跡調査に纏わる考古学的実践や、岩手県御所野遺跡公園での縄文時代の復元家屋製作、北海道・北東北の縄文遺跡群の世界遺産登録推進運動に関するフィールドワークをおこない、“Ethnography of Archaeology”を刊行しています。

 そうした二人がとあるきっかけで、2013年3月にニューヨークで開催されていた “Arts of Jomon” を観に行こう、ということになりました。日本列島の先史文化である「縄文」をテーマに有志が集うNPO団体がアメリカのニューヨークという街で“Jomon”をアートとして展示する、というのは上記のような関心を持つ我々にとって、とても興味深い現象でした。アートギャラリーが集中しているチェルシー地区の会場に到着後、展覧会の主催者とメイン・キュレーターのお二人にインタビューをしました。その時の一端は吉田のセンターコラムをご覧ください。

 私はその時が初めてのアメリカ渡航で、ニューヨークの後は西海岸のカリフォルニア大学バークレー校を訪問しました。東西海岸の気候・街の雰囲気の違いや、東西問わず全般的に大味かつ大量の料理に驚きつつ、道すがらジョンさんと様々な話をしましたが、「考古学と現代社会」ユニット立ち上げに繋がった会話を要約すると、以下のようになります。

ジョン「英語圏での『日本考古学』の語りはある種の『型』みたいなのがあって、何かと『日本人論』とかナショナリズムとの繋がりが強調されて、だから日本考古学は問題あり、みたいなのが多いんだけど、自分が目にしている日本考古学の有り様とズレがあるように思うんだよね」

吉田「そうかもしれないけど(実はたいして英語文献読んでない)、翻って日本の中で、今回見てきた“Arts of Jomon”みたいなのも含めて、日本考古学の有り様を広く語っているかというと、ゼロではないけど活発でもないよ」

 とりあえずこのコラムを短く切り上げるために色々省略していますが、兎にも角にも以上の問題意識が文化資源学セミナー「考古学と現代社会」シリーズ開始のきっかけとなり、後に当時のセンター長・藤井純夫先生の、「センター内で『課題ユニット』を組みなさい」という話が後からついてきて本ユニットも立ち上げ、となった訳です。次回以降のコラムでは、これまで開催してきたセミナーを駆け足で振り返ります。

狩りから稲作へ2013-14:課題ユニット「考古学と現代社会」のこれまで、これから2
考古学図鑑2014:課題ユニット「考古学と現代社会」のこれまで、これから3
もしドラ2015 :課題ユニット「考古学と現代社会」のこれまで、これから4

ページの先頭へ戻る