コパン考古学プロジェクトについて
金沢大学がリエゾンオフィスを置く中米ホンジュラス共和国のコパンルイナス(図1)では、ホンジュラス国立人類学歴史学研究所のコパン考古学プロジェクト(PROARCO)により、世界遺産「コパンのマヤ遺跡」の発掘調査や修復作業が続いています。
コパンは数多いマヤ文明の古代都市遺跡のなかで世界遺産に登録されている8つのうちの一つで(図2)、青銅器、鉄器など金属を持たなかった古代マヤ人たちが立体的な石造彫刻を制作し装飾した芸術の都市として知られています(図3、4,5)。本センターの専任教員である中村誠一教授は、コパンでPROARCO全体の指揮を任されており、博士後期課程の大学院生もPROARCOに参加・協力しています。PROARCOの調査には、一部、日本学術振興会の科学研究費補助金(基盤A;2018~2022)や二国間交流事業共同研究資金(ホンジュラス:2018~2019)、本学の超然プロジェクト研究資金も投入されています。
PROARCOは、現在、コパン遺跡中心グループ北側にある支配者層の居住区域である通称ヌニェス・チンチージャ・グループ(グループ9L-22と9L-23)において最終段階の発掘調査を建造物9L-102で行っています(図6)。中村教授とホンジュラスの研究所は、グループ9L-23の北側に残された区域に関しては、今回のPROARCOの学術成果やそこから導き出された仮説を将来的に検証するため、次世代の考古学者に残しておく計画です。そのため、建造物9L-102の発掘調査と修復作業が終了すると、2003年から日本の協力で断続的に7シーズン(通算して約7年間にわたる現場調査)にわたって行われてきた考古学プロジェクトが一区切りとなります。
最後の発掘調査と修復作業が行われているグループ9L-23においては、これまで建造物9L-105で5世紀の集団埋葬墓(2016~2017年)が、9L-102南側では7世紀の大型石室墓(2017年)が見つかっています(図7)。現在、建造物9L-102北側から予期していなかった埋蔵建造物(基壇)2基が出土したためその調査を行っており(図8)今後の発掘調査における重要な石室墓の発見も期待されています。