コパン考古学プロジェクト:7号神殿発掘調査成果の概報(1)
国際文化資源学研究センター教授
中村誠一
(2019/5/14)
現在、7号神殿(建造物10L-7)の発掘調査が進行中です。日々の様子はSNSで報告されていますが、このレポートではこれまでの成果を概報します。
7号神殿(建造物10L-7)には中央部に大きなトレンチ(発掘溝)の跡が残されています(写真1、2)。掘ったトレンチから出土した建造物内部の詰石や土を、この建造物のすぐ背後、方角でいうと西側に放って積み上げたことが見て取れます。本年2月に凸版印刷株式会社の所有する可搬型LiDAR機器を使って凸版の専門家の指導を受けながらプロジェクトの人員が測量し、その獲得した点群データを国際文化財(株)のご協力によって三次元モデル化した図1ではその様子が手に取るようにわかります。
問題は、このトレンチは誰が掘ったのか、その発掘時に何を見つけているのか、という点です。ホンジュラス国立人類学歴史学研究所のコパン地方考古学調査研究センター(略称クリアCRIA)には、この発掘に関する正確な記録が残されていません。そのため、19世紀末の時代から現代までのどの考古学者がこの建造物を発掘したのか、ハーバード大学ピーボディ博物館に勤務するコパン研究者の助力も得ながら、いろいろな文献資料をあたって確認しているところです。目星が付きつつありますが、その結果に関しては、後日、報告したいと思います。
これまでの発掘調査では、この建造物背後に放りだされ積み重なった石材を振り分ける作業や往時の建物の床面まで発掘して露出させる作業が行われています(写真3)。いろいろな石材が出土しますが、一見、ただの石材に見えても、モザイク状の石造彫刻品の一部を構成するものであったり、建造物の壁や屋根に使われたと思われる整形された石であったりします。これらを今後の修復時の再利用に備えて分類していくのです。現場からはこれまでに15個くらいの石造彫刻品が、旧発掘溝の表面から確認されており(写真4)、往時の装飾部の近くからずれ落ちたと思われるような状況で出土した石彫もあります。
これまでに、この建造物の正面階段に集められていた骸骨の石彫(写真5)に関して、隣接する未発掘の8号神殿(建造物10L-8)からのちの時代に持ってこられたものではないか、と考える研究者も数多くいました。それは、別のレポートで詳しく述べますが、7号神殿でコパン王朝崩壊後の後古典期の活動が確認されていることと、未発掘である8号神殿の地表面にも骸骨の石彫が散乱しているのが確認されているからです。
しかしながら、これまでの我々の発掘調査により、発掘というコンテクストにおいて骸骨の石彫が初めて発見されたことから(写真6)、この装飾パーツは、この建造物特有のものではないかという可能性が高まっています。
日々の発掘調査の様子は、SNSで逐次発信していきますのでそちらでご覧ください。
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