研究生レポート:JICA「草の根技術協力事業」の2019年度本邦研修(5日目)

Miguel Ángel Echeverría Tager
(ミゲル・アンヘル・エチェベリア・タヘル)
(2019/10/11)

 金沢市内の歴史的な価値を持つ地区をめぐる視察の二日目(10月10日)は、金沢職人大学校への研修生にとって有益な訪問から始まった。午前中はアレハンドロ・ファジャ氏と小川雅洋氏が同行し、通訳兼研修監理員を務める瀧氏を補助した。金沢職人大学校の事務所長である淵吉忠氏は私たちを教室に迎え入れ、職人の仕事が必要となる保存地区を有する都市の中で、このような教育機関の持つ役割について、写真を提示しながらプレゼンテーションを行った。同種の機関を代表し、グアテマラ職業訓練校のカルロス・ゴンサレス氏はこの訪問に最も興味を示していた。プレゼンテーションを聞き、大工、畳、瓦、左官、木材、竹、紙、板金の加工等、職人の技術を訓練する実際の場を訪問した後、カルロス・ゴンザレス氏は淵吉忠氏に感謝を意を表した。淵吉忠氏とカルロス・ゴンザレス氏はお互いに自己紹介をし、将来共に共働できるよう名刺交換を行った。


淵吉忠氏によるプレゼンテーション
翻訳者のすぐ後ろの前列席にカルロス・ゴンサレス氏



藁の技術を訓練する場を訪れた研修生


 午後から加賀友禅の絵付師、寺西一紘氏の工房がある長町友禅館を訪れ、金沢の長町武家屋敷界隈の視察を開始した。 加賀友禅の製造プロセスに関する短いプレゼンテーションの後に、現在展示されている友禅の絵付けを行った工房主に会う機会があった。 私たちが出会った、日本の国境を越えて知られているそのアーティストは、私が彼にサインを頼んだときに驚くほど謙虚な方であった。 このアーティストが私のノートにサインするためにペンを使用せず、代わりに彼がシャツのポケットに入れた絵付け用の筆を使用したことは、非常に意味を持ったジェスチャーであった。


絹の染色と絵付けのプロセスを学ぶ研修生のグループ


 絹の柔らかな質感と、布と着物の崇高な装飾が、クリステル・ピネダ氏とイングリ・モラレス氏の目を引いた。彼女たちは着物を着て絹の感触を体験し、どのように見えるかを確かめたいと思っていたのではないかと考えられる。

次に、私たち全員が長町武家屋敷地区に歩いて行き、かつて強力な武家であった野村家の再建された家を訪れた。家は忠実に再現されており、その内部には美しい庭園の眺めも見ることができた。金沢職人大学校で見た、畳で覆われた床の上を歩く機会があった。歩き疲れた研修生は足の裏で、畳の柔らかい感覚を体験した。床に座るためのクッション、急須、カップがきちんと用意された茶室では、お茶を飲む日本人のように座っている自分の写真を撮ることができた。観光客に受動的に観察させるのではなく、観光資源を舞台として設置し展示内に参加させるこのコーナーは展示の中でも最も人気のあるアトラクションであると、私たち全員が思った。


武家屋敷でクリステル・ピネダ氏にお茶を提供する動作をするフランシスコ・カノ氏



翻訳を兼ねガイドを行う瀧達氏が、カルロス・ゴンザレス氏にさまざまな種類の畳について説明している


 研修生たちが家を巡回している間、私は庭に戻り、時間をかけて、庭の平和な雰囲気を楽しんだ。私は、このまちでは小さな空間の中であっても、生活が自然との調和を保っているということにひたすら驚いた。家を出ようとする間、私たちは日本家屋の一般的な建築設計における空間の効率的な活用についてコメントした。何世紀も前に建てられた武家屋敷のように、今日の公共空間も数学的な精度で設計され、分布している。これは、教室で学んだことのない多くの教訓の一つであり、この日本への訪問が私たちに残した教訓の一つである。

武家屋敷周辺を歩いていると、庭から出てくるイエス・キリストの像に驚いた。小道をたどると、この街にある数少ないキリスト教会の1つを見つけた(私たちが見つけた他のキリスト教会は、金沢大学角間キャンパスに向かう途中のバスからいつも見られるものである)。教会に入ると私たちは皆、西と東が遠く離れていることに気がづいた。教会の西側半分には教会によくある通常のベンチがあり、残りの東側半分には畳があった。東と西が並んでいる様子は最高の描写であった。


長町地区の聖霊病院近くのカトリック教会


 本日の視察の最後、長町から、芸者がまだ活動を行っているもう1つの歴史的価値を持つ地区であるにし茶屋街に向かった。 今回は、地元のガイドが私たちをにし茶屋資料館に案内し、実際の芸者の家を再現した施設に連れて行った。芸者がパフォーマンスを行い男性を楽しませた、ホールのような小さな劇場には、それぞれ別の独立した出入り口があった。 歴史的建造物の保存の方針の下、資料館のような茶室は特に外観に関して、適合させなければならないことを学んだ。


資料館に入る前に、にし茶屋街を歩き、ガイドから建物の正面の説明を聞く研修生のグループ


 にし茶屋街の静かな通りを歩くと、西洋の耳には馴染みのない音楽が聞こえた。 私たちは芸者の学校の前を通り、将来の芸者たちが三味線の演奏方法を学んでいることがわかった。 博物館でこの弦楽器を見た直後、日本の伝統的な音楽の音と構造に耳を傾け、無料のコンサートを聞いて黙って立っている間、さらに別の西と東の出会いがあった。