金沢大学コパン・リエゾンオフィス(ホンジュラス)の状況 2020-06

現地調整員
佐藤陽一
国際文化資源学研究センター教授
中村誠一
(2020/6/22)


ホンジュラスの状況

 3月11日に新型コロナウイルスの最初の感染者が検出されて以来、ホンジュラスでは陽性と確定された人の数は増え続けている。6月22日時点で累計13,356人の感染者が確認されており、6月後半になると毎日400~500人以上の感染が記録されるようになっており検査数に対する陽性率は50%前後となっている。これまで感染の中心はホンジュラス第2の都市であるサンペドロスーラ市を中心としたバジェ・デ・スーラ地域(コルテス県、ヨロ県の一部、サンタバルバラ県の一部)であったが、6月に入ると首都のテグシガルパ市(フランシスコモラサン県)での増加が目立つようになっている。


件名 陽性者数 死亡者数 回復者数
コルテス県 6,055 237 751
ヨロ県 408 10 67
サンタバルバラ県 167 5 10
フランシスコモラサン県 4,263 76 244
コパン県 61 1 8

(ホンジュラス保健省 6月20日現在)


 このような状況下ではあるが、ホンジュラスでは6月8日から経済活動の暫時的な再開を開始した。これは感染者数などの状況によって各県を3つのレベルに分類し、レベルごとに決められた水準での経済活動を再開するものであり、2週間ごとに開放の度合いを進めてゆく計画であった。これによれば6月22日の週から開放が進むはずであったが、感染者数の増加を考慮して、現状維持の状態を6月29日まで一週間延長する決定が政府によってなされた。

 このように、経済活動は一部で再開されているものの、外出禁止令は以前と同様の状態が続けられており、個人の外出(銀行、生活必需品の購入)は身分証明書番号の末尾の数字によって月曜日から金曜日までに割り当てられた日のみとなるため2週間に1度に限定されている。また、土曜・日曜の外出は禁止されている。

 国際空港は貨物や外国滞留者の帰国用の特別便などを除いて運航は行われておらず、陸路の国境も貨物輸送を除いて入国は禁止されている。

ホンジュラスでのCovid-19による感染者の死亡率は4月までは10%を超える状態であったが、その後、感染者を軽症者と重症者に分けてそれぞれにホンジュラスでの標準治療を適用することになり、医療従事者の努力と治療方法への知見の集積の結果、現在では死亡率は3%程度に下がっている。


コパンルイナス市での感染者

金沢大学コパン・リエゾンオフィスの位置するコパンルイナス市においてもこれまでに3件の感染者があったことが報告されている。

  1. 5月7日 20歳女性
  2. 患者は症状が軽かったため、濃厚接触者1名とともにリエゾンオフィスに併設している文化遺産人材育成・保存センターに設けられた感染疑い者用の施設で隔離されることになった。

  3. 6月12日 36歳女性
  4. 患者はラ・エントラーダ市(コパンルイナス市より約60km東に位置する市)に設置された感染疑い者用施設で隔離されている。

  5. 6月16日 19 歳男性
  6. この患者はコルテス県の居住者でありコパンルイナス市に居住していないが、出身がコパンルイナス市のため、身分証明書の登録地からコパンルイナス市と推定されて感染が発表されたもので、コパンルイナス市で発生したものではないことが判明した。

これらの中で直接コパンルイナスと関係し、本学のコパン・リエゾンオフィスと関連するのはa)の事例である。しかしながら、現時点では隔離期間の14日間を過ぎ、対象者は5月中に陰性となり退所していたことが確認されている。


金沢大学コパン・リエゾンオフィスの状況

 コパン文化遺産保存人材育成センター内に設置された金沢大学コパン・リエゾンオフィスには、調査・研究のための機材が保管してあるが、センター内で併設する施設がCovid-19の感染疑い者用の施設として指定されたことから、5月上旬から全面閉鎖し立ち入らないようにしていた。

 5月に陽性者が1名収容されたことから近づくこともできなかったが、退所して十分な期間をとり、また、その間に新規感染者の発生による施設の利用がなかったことから、この機会に消毒作業を実施して、リエゾンオフィスの状況を調べることになった。6月17日に消毒作業が実施され、内部に保管してある機材・機器の状態の検査が行われた。消毒を行った後に事務室内部を検査し、機材・機器は、以前と同様の状態で保管されていることが確認された。


消毒作業の様子


消毒用機材


外壁の消毒


パティオ


パティオ側事務室入り口


パティオへの入り口


事務室内


事務室内


事務室内


事務室内


コパン遺跡神殿7の現況

 ユネスコの世界文化遺産に登録されているコパンのマヤ遺跡の神殿7において金沢大学の研究調査が進められていたが、新型コロナウイルスの影響により発掘調査は3月から中断している。

 調査中の建造物には天幕をかけて保護してあったが、熱帯暴風雨の通過や雨季に入ってのスコールの影響で発掘調査中の箇所に水がたまり、ところどころ天幕が破けて用をなさなくなったりしていることが判明した。

 コパン考古学公園は現在閉鎖されているが、経済活動の再開計画に基づいて7月以降に考古学公園の再開が計画されている。神殿7はコパン遺跡の中心部の観光客が必ず訪問するエリアに位置しているため、遺跡調査個所の保護だけでなく観光客の安全確保のための措置も必要とされている。これらは、当該建造物で発掘調査を実施中の金沢大学調査団の責任業務であるため、7月から研究費を投入して必要な維持作業を実施する予定である。


現況写真


破損した天幕


破損した天幕


神殿前面


遺跡遠景


破損した天幕


破損した天幕


破損した天幕


破損した天幕


今後の対応

 ホンジュラスおよびコパンルイナス市における新型コロナウイルス感染拡大の状況を常に把握しながら、発掘調査の再開に備えて、管理・保全のための最小限の作業を続ける。感染の恐れが生じた場合には、直ちにすべての作業を中断することとする。この業務内容は、Zoom 等のインターネット会議プログラムを通じて、日本から常時、把握・指示すると同時に、国際文化資源学研究センターのSNS 上でも定期的に発信する。


コパン・リエゾンオフィス

 センター内の隣接の施設が、コパンルイナス市の感染疑い者用収容施設として指定されていることから、当面の間は備品管理や清掃など、必要最低限の立ち入りにとどめることとする。立ち入りが必要となった場合でも、安全確認や消毒作業等の措置を経てから必要最小限の時間のみ利用する。


コパン遺跡神殿7の調査個所

 調査個所の排水・清掃や雨による崩落等への対応、天幕の張り替えなどを、最小限の作業員で定期的に実施してゆく予定である。


以上。