文化庁 文化遺産国際協力拠点交流事業 「グアテマラ世界複合遺産「ティカル国立公園」における文化遺産の三次元計測と取得データの活用法に関する現地人材養成事業」について

 これまで、金沢大学では、中村誠一教授を中心に、中米のマヤ文明の調査研究の一環として、マヤ文明を代表する世界遺産遺跡を対象とした発掘調査・修復保存活動を長年行ってきました。その中でも、グアテマラ共和国のティカル国立公園(世界複合遺産:登録1979年)では、中村誠一教授のイニシアティブや指揮によって、外務省の文化無償資金協力による「ティカル国立公園文化遺産保存研究センター」の建設や「ティカル北のアクロポリスプロジェクト」での修復保存と事前発掘調査が行われてきました。さらに、2013年から2015年にかけては、JICAの課題別研修「地域資源としてのマヤ文明遺跡の保存と活用」が、また2014年からは、JICA草の根技術協力事業が実施されており、現在その2期目である「ティカル国立公園への観光回廊における人材育成と組織化支援プロジェクト」において、ティカル国立公園近隣のコミュニティ住民を対象にした文化資源を活用した生活向上支援プロジェクトも進められています。

 このように、中村誠一教授が長年精力的に調査研究および国際貢献を続けてきたティカル国立公園を対象に、今年度から、また新たな事業が行われることになりました。昨年度末、文化庁の文化遺産国際協力拠点交流事業の一つとして採択された「グアテマラ世界複合遺産ティカル国立公園における文化遺産の三次元計測と取得データの活用法に関する現地人材養成事業」がいよいよ始動します。



本事業の概要と目的

 マヤ文明を代表する世界遺産であるグアテマラのティカル国立公園では、過去の発掘調査により露出された建造物が多数ありますが、長年の熱帯雨林気候による浸食が顕著となっています。そのため、最新の技術に基づいた修復保存計画の着実な実施が不可欠です。その基盤となるのが建造物の正確な三次元計測データとなります。しかしながら、現地では、いまだ文化遺産の三次元計測に関する知識が普及しておらず、三次元データの重要性も理解されていません。そのため、ティカル国立公園で働く考古学技術者は、20世紀型の手作業による簡易実測に基づいた図面作成を行い、それに基づいて修復保存計画を立案し実施しているのが現状です。

 そこで本事業では、金沢大学が2011年から研究教育拠点を設置しているティカル遺跡中心部の文化遺産を対象として、公園所属の考古学技術者に三次元計測の基礎理論やその活用の重要性、具体的なデータ取得方法やその処理法・活用法をオンライン、対面のハイブリッド型研修プログラムを通して教授し、三次元計測の基礎理論や実践手法を身に付けた現地人材を養成することを目的としています。



活動期間

2021年4月15日~2022年3月31日



本事業の対象

 主な対象は、ティカル国立公園の専門スタッフおよび、次世代のグアテマラ文化遺産の保護を担う国立サンカルロス大学ペテン県分校の専攻学生としていますが、オンライン研修の利点を生かし、金沢大学がもう一つの研究拠点を設置している隣国ホンジュラスの研究所スタッフや国立自治大学の考古学専攻学生、またJICA課題別研修に参加したエル・サルバドル文化省の考古学スタッフにも門戸を開放する予定です。

 こうして、マヤ文明の重要な文化遺産を有する中米諸国間の交流や情報交換を促進させ、各国が独自に持つ遺跡の修復保存のノウハウや三次元計測とその取得データの活用に関して直面している課題を共有する契機としたいと考えています。



研修計画

 6月から本事業の主な活動である研修を開始していきます。残念ながら、中米でも新型コロナウイルス感染拡大の勢いが収まらない現状にありますので、オンライン研修が中心となっていく予定です。各研修の詳細は以下の通りです。